Love nest~盲愛~

「その人物から先日、正式にえな名義に譲渡して貰ったから、これら全てお前のものだ」

「えっ?!……哲平さんのではなくて?」

「俺が持ってても意味ないだろ」

「だって……」


名義を変更するにしたって、株を買い取るにしたって、相当なお金がかかってるはず。

私に、そんな価値は無いのに……。


「本当は、毎日えなに渡してるお金を使って、自分の手で取り戻させてやりたかったんだが、最短でも4年くらいかかるから、俺の方で手は打たせて貰った」

「……」


毎日100万、それを4年……。

卒倒するような額だよ。


「私、そんな大金、返せませんよ?」

「フッ、返して貰うつもりはないから安心しろ」

「でも……」

「えなの父親が、両親の会社を最後まで頑張ってフォローしてくれた恩返しも兼ねてるし」

「それは当たり前の事ですよ、親友だったんだから」

「えな、一度しか言わないからな」


彼が私の両手を握り、真っ直ぐ見つめる。


「本当の俺を取り戻す為に、えなの未来を俺にくれ」

「っ……」

「苦労と後悔は絶対させない。他の男に目移り出来ないほど、俺の全てで愛し倒してやる」

「っ……」


愛し倒すって……?

何だかプロポーズなのに恐怖を感じるのは私だけ?

しかも、このプロポーズに何て返事を返すのが正しいのかしら?

昼間、何て言って欲しいかと尋ねられたけど、あの時に王道でと言えばよかった……。

でも、返事はOKしか無い。

だから、何て返してもきっと同じなんだろう。


「私でよければ、私の全てを捧げます」


これしか思い浮かばなかった。

毎日そばにいて相当毒されてるようだ。

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