Love nest~盲愛~
そっと抱き締められて、優しく髪が撫でられる。
後悔はしてない。
むしろ、もっと早くにしててもよかったくらい、これまでの事に感謝している。
無言で顔を横に振る。
見知らぬ人にお金で買われる事も覚悟した程なんだから、好きな人に抱かれるなら本望というもの。
「なら、我慢しろ」
他に言い方は無いの?
こういう時はもっと優しい言い方があると思うのに。
腕枕状態で彼の顔を見上げると、緩やかに口角が持ち上がり、満足げな表情を浮かべた。
「安心しろ」
「何をです?」
「相性はかなり良い方だ」
「っ……」
「育て甲斐がある」
「ッ?!」
彼の瞳が怪しい光で揺らめいた気がするのは気のせいだろうか?
「体の痛みが取れるまでここに滞在するから」
「お仕事は?」
「休みにしてある」
「大丈夫なのですか?」
「俺が代表なんだから、文句言う奴はいないだろ」
「……それはそうかもですけど。私のためにわざわざ仕事を休んでまで…」
「仕事は二の次だ」
「えっ」
「幾ら信用しているスタッフとはいえ、さすがに毎日ずっと居合わせていて、えなを好奇な目で見られたくない」
自宅の使用人さん達のことね。
ある日突然、動けないほどの痛みを訴えたら怪しむのは間違いない。
それでなくても、毎日のようにキスマークは十分過ぎるほど散らされているのだから。
彼なりの優しさ。
ほんの少し行き過ぎかと思えるほどの。