Love nest~盲愛~
**
「お帰りなさいませ」
「ただいま戻りました」
「少し熱があるから、薬と世話を頼む」
「承知しました」
自宅のエントランスに車を横付けし、トランクや後部座席から荷物を下ろす彼。
それを手伝う執事長の奥村さんを横目に、私と今井さんは2階の部屋へと向かった。
*
「では、えな様。御用がお有りの際はお呼び下さい」
「ありがとうございます」
今井さんはスマホを手にして、連絡はコレで!と合図した。
部屋着に着替えた私は、ベッドに潜り込む。
緊張から解放された体は、疲労感が一気に出たようで、その晩熱が39度まで上がった。
「えな」
久しぶりの高熱で完全にダウンした私は意識朦朧としながら、心地よいバリトンボイスの幻聴に癒され深い眠りについた。
「早く元気になれ。あまり心配させるな」
「坊っちゃま、代わりますよ」
「ん、後は頼む」
哲平はうしろ髪引かれながらも自室へと戻る。
*
翌朝、37度台に熱が下がったえなは、哲平の出勤支度を手伝おうと隣の部屋へと。
コンコンコンッ。
部屋の中から声がして、まだ出勤してない事に胸を撫で下ろす。
「失礼します。おはようございます」
「えなっ、もう起きたのか?もう少し寝てたらいいのに」
「ご心配お掛けしました。もう大丈夫です」
「無理するな」
哲平はネクタイを結びながら、微笑むえなを見据え溜め息が出る。
えながどうして欲しいのか、分かるからだ。
「ん、ちょっとだけだぞ?」
昨日1日殆ど傍にいてやれず、寂しい想いをさせた事への罪滅ぼし。
哲平はえなを優しく抱きしめた。