Love nest~盲愛~
「えな」
「他に入れるものは?」
「そんなことはどうでもいいから」
「えっ……」
彼の手によって体の向きが反転させられる。
彼の腕の中で彼を見上げるように視線を持ち上げると、額に優しい口づけが。
それが合図のように、瞼に、頬に、耳に、唇にキスが落とされる。
いつもならこの流れで必ず首に赤い薔薇を散らすのに、今朝は首に唇を寄せただけ。
何故か、彼はキスマークを付けなかった。
とはいえ、一昨日つけたものがまだ薄っすらと残ってはいるけれど、心なしかいつもされていることをされないと、不安になる。
「キスマーク付けないんですか?」
「付けて欲しいのか?」
「欲しいというか………欲しいです」
「フッ、すっかり俺に毒されてるな」
「だって……」
「今日は首に付けるのは止めておく。その代わり……」
「ッ?!………っん……」
彼はブラウスのボタンを2つ外し、露わになった胸元に赤い薔薇を散らした。
そして、消え入りそうなほど小さな声で『えな』と呟いた。
チュッと触れるだけのキスを唇に落として。
「行って来ます」
「……あ、はい、行ってらっしゃい」
彼をエントランスまで見送ろうと思ったが、ブラウスのボタンが外されっぱなし。
慌ててそれを付けて、急いで玄関へと向かったが、彼を乗せた車が出発した後だった。
「えな様?」
「行っちゃいましたね」
「喧嘩でもされたんですか?」
「あ、いえ……、何でもないです」