Love nest~盲愛~
大捕り物は無事に終わり、久我が無線で合図を送る。
警視庁の婦人警官がえなに毛布を掛けた、次の瞬間。
「えなっ!!」
「っ……てっ、ぺぃ、さ……んっ……」
緊張していたのが一気に崩れたのか。
それまで気丈に振る舞っていたえなが、大粒の涙を溢し泣き崩れた。
哲平はえなのもとに駆け寄り、毛布ごと包むように抱き締めた。
「すまないっ」
「ぅっ……ッ……こわっ……かったですっ」
「本当にすまないっ、もう大丈夫だからっ」
えずきながらしゃくり上げ、小刻みに体を震わせているえなの背中を優しく摩る。
「もしか……して、これ………哲平、さんが?」
状況を把握したようで、漸く今朝、いつも付けている首筋の赤い薔薇が胸にされた事を理解していた。
しかも、突入して来るタイミングもギリギリのラインでバッチリだし。
何より、彼の後ろで深々と頭を下げている白川さんの姿が目に入ったからだ。
常軌を逸しているとは前々から思っていたが、まさか、自分が餌になり、敵を引き付ける役を担うとは思ってもみなくて。
一掃したい気持ちは痛いほど分かるが、よりによって、あんな危険な連中相手に自分が渦のど真ん中に放られるとは信じ難くて。
彼の事情もよく理解している。
理解しているんだけれど、自分におかれた状況があまりにも恐ろしくて。
恋人を危険な目に遭わせてでも倒したかったのだと思うと、正直、心中穏やかではない。
もしかしたら、殺されていたかもしれないのに……。
彼が駆け付けたのだって、連行されてものの数分後。
近くで待機していたのだと思ったら、悲しくて感情がコントロール出来そうにない。