Love nest~盲愛~

「そういう手には乗らないんだからっ」

「マジでごめん。俺が悪かったって」


膝の上でぎゅっと握られる彼女の手をぎゅっと掴む。

その手が小さく震えているのに気づき、哲平は心の底から申し訳なさに襲われた。


「行きたい所とか、食べたいものとかあるか?」

「吐気がするから食べたくないっ」

「じゃあ、行きたい所は?家に帰るか?」

「今すぐ、お風呂に入りたいっ」

「あ、………そうだな」


孝之に触れられた事が生々しくて、今すぐゴシゴシと洗い流したかった。

恐怖で変な汗もいっぱい掻いたし、今すぐ着ているこの服ですら脱ぎたくて。

それに、飲みなれないウイスキーを口にしたせいで、くらくらする。


「えなの家の方が近いから、えなの家に車回すな」


えなは気持ちを落ち着かせることで手一杯だった。

えなの生家まで車で15分ほど。

その途中のモールで、えなの服と簡単な飲食を購入して。


えなの生家に到着し、哲平は助手席のドアを開け、頭をぶつけないように手を枠に添える。

けれど、足を動かす素振りは見せるも、降りようとしないえな。

哲平は視線を合わせるように覗き込むと。


「足が震えて……」

「……ん」


自力では降りられない、そう伝えたいのだと理解した哲平は彼女に鍵を渡し、抱き上げた。


リビングのソファーにそっと下ろし、湯張りと着替えの用意をする。

買って来た服からタグを取り、脱衣所にそれを置く。


「えな、1人で入れそうか?」

「……たぶん」

「無理だったら声掛けて」

「……ん」


湯張り完了を知らせるメロディーが鳴り、えなを脱衣所へと連れて行く。

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