Love nest~盲愛~
「怖かったよな。……ごめんな、危険な目に遭わせて」
「うっ……っ……」
汚されたわけではない。
下着の金具が外されただけ。
だけど、哲平さん以外の人に外された経験の無い私は、自分がいけない事をしてしまったかのような罪悪感に襲われた。
「大丈夫、えな、大丈夫だから」
優しく声をかけてくれる哲平さんのバリトンボイスも、今日ばかりは朦朧とするほど遠くに聴こえて。
ウイスキーのせいなのか。
心が壊れてしまったからなのか、分からない。
だけど、哲平さんが傍にいてくれないと、もう二度と触れて貰えないんじゃないかと不安になる。
愛が無くても関係を持つ人もいるし、愛が無いからこそ割り切って関係を築く人達もいる。
だけど、私にはそういう境地に至るほどの経験値もない。
「き……た、ない?」
「ん?」
「けが……れ、……て、る?」
「何馬鹿なこと言ってんだっ。汚くもないし、汚れてもないから安心しろ」
「でも……」
「そんなに心配なら、俺が綺麗にしてやる」
「っ……」
優しく髪を撫でた彼は、ワンピースの肩先を静かに下ろした。
恥ずかしさのあまりぎゅっと目を瞑る。
緊張とお酒と不安と恐怖と、何とも言えない状況で体が動かない。
だけど、見られて恥ずかしいと思う反面。
彼が触れてくれる箇所から、嬉しさと安心感が込み上げて来て――。
彼に支えられ、ゆっくりと立ち上がると、ストンッとワンピースとブラジャーが床に落ちた。
辛うじて身に着けているのはショーツだけ。
彼に見られるのは初めてではないし、裸ではないけれど、お風呂だって一緒に入ったことがある。
目を瞑っていたら、きっとそれほど怖くない……そう思えて。