Love nest~盲愛~

「怖かったよな。……ごめんな、危険な目に遭わせて」

「うっ……っ……」


汚されたわけではない。

下着の金具が外されただけ。

だけど、哲平さん以外の人に外された経験の無い私は、自分がいけない事をしてしまったかのような罪悪感に襲われた。


「大丈夫、えな、大丈夫だから」


優しく声をかけてくれる哲平さんのバリトンボイスも、今日ばかりは朦朧とするほど遠くに聴こえて。

ウイスキーのせいなのか。

心が壊れてしまったからなのか、分からない。

だけど、哲平さんが傍にいてくれないと、もう二度と触れて貰えないんじゃないかと不安になる。

愛が無くても関係を持つ人もいるし、愛が無いからこそ割り切って関係を築く人達もいる。

だけど、私にはそういう境地に至るほどの経験値もない。


「き……た、ない?」

「ん?」

「けが……れ、……て、る?」

「何馬鹿なこと言ってんだっ。汚くもないし、汚れてもないから安心しろ」

「でも……」

「そんなに心配なら、俺が綺麗にしてやる」

「っ……」


優しく髪を撫でた彼は、ワンピースの肩先を静かに下ろした。

恥ずかしさのあまりぎゅっと目を瞑る。

緊張とお酒と不安と恐怖と、何とも言えない状況で体が動かない。

だけど、見られて恥ずかしいと思う反面。

彼が触れてくれる箇所から、嬉しさと安心感が込み上げて来て――。


彼に支えられ、ゆっくりと立ち上がると、ストンッとワンピースとブラジャーが床に落ちた。

辛うじて身に着けているのはショーツだけ。

彼に見られるのは初めてではないし、裸ではないけれど、お風呂だって一緒に入ったことがある。

目を瞑っていたら、きっとそれほど怖くない……そう思えて。

< 196 / 222 >

この作品をシェア

pagetop