Love nest~盲愛~
彼も服を脱いだようで、肌に彼の肌を感じた。
目を瞑っているから半信半疑だけれど。
室内の照明も心なしか、少し薄暗いように感じる。
瞼越しの明かりが、それほど眩しいと思えないからだ。
「綺麗だな、えなの肌」
「っ……」
柔らかいスポンジが肌を撫でる。
彼が丁寧に洗ってくれているようだ。
「ごめんなさいっ」
「何故、謝る」
「何から何までさせてしまって」
「俺がしたいんだから、気にするな」
後ろ首にチクっと僅かな痛みを感じた。
彼が赤い薔薇を散らしたようだ。
「前は自分で洗えますっ」
「フッ、遠慮しなくてもいいのに」
「っ……」
彼と会話したせいか、少しずつ気持ちも落ち着いて来て。
泡立てられたスポンジを手渡された。
隣りで彼も体を洗い始め、髪はお互いに洗い合って……。
彼に抱き上げられ、湯船に浸かる。
前は下着を着けたままだったのに……。
少し大きめの浴槽も、彼と2人で入ると少し狭く感じるほど。
お互いの肌が触れ合い、否応なしに胸がトクトクと暴れて――。
彼に抱えられるような体勢の私は、ほんの少し振り返って彼に寄り掛かった。
そんな私を優しく包み込んでくれる。
「えな」
「……はい」
「二度と、怖い目には遭わせないから」
「……ん」
「許してくれるか?」
「………」
「して欲しい事でも、買って欲しいものでも、連れて行って欲しい場所でも、何でも聞いてやる」
10年以上耐えに耐えて、やっと今日、決着をつけたのだろうから。
それを考えれば、私が遭ったことなんて些細なことだ。
だって、彼の背中や腕や肩の傷に比べたら、傷一つ付けられたわけでもないのに、取り乱して。