Love nest~盲愛~

彼も服を脱いだようで、肌に彼の肌を感じた。

目を瞑っているから半信半疑だけれど。

室内の照明も心なしか、少し薄暗いように感じる。

瞼越しの明かりが、それほど眩しいと思えないからだ。


「綺麗だな、えなの肌」

「っ……」


柔らかいスポンジが肌を撫でる。

彼が丁寧に洗ってくれているようだ。


「ごめんなさいっ」

「何故、謝る」

「何から何までさせてしまって」

「俺がしたいんだから、気にするな」


後ろ首にチクっと僅かな痛みを感じた。

彼が赤い薔薇を散らしたようだ。


「前は自分で洗えますっ」

「フッ、遠慮しなくてもいいのに」

「っ……」


彼と会話したせいか、少しずつ気持ちも落ち着いて来て。

泡立てられたスポンジを手渡された。

隣りで彼も体を洗い始め、髪はお互いに洗い合って……。


彼に抱き上げられ、湯船に浸かる。

前は下着を着けたままだったのに……。

少し大きめの浴槽も、彼と2人で入ると少し狭く感じるほど。

お互いの肌が触れ合い、否応なしに胸がトクトクと暴れて――。

彼に抱えられるような体勢の私は、ほんの少し振り返って彼に寄り掛かった。

そんな私を優しく包み込んでくれる。


「えな」

「……はい」

「二度と、怖い目には遭わせないから」

「……ん」

「許してくれるか?」

「………」

「して欲しい事でも、買って欲しいものでも、連れて行って欲しい場所でも、何でも聞いてやる」


10年以上耐えに耐えて、やっと今日、決着をつけたのだろうから。

それを考えれば、私が遭ったことなんて些細なことだ。

だって、彼の背中や腕や肩の傷に比べたら、傷一つ付けられたわけでもないのに、取り乱して。

< 197 / 222 >

この作品をシェア

pagetop