Love nest~盲愛~
店内左奥のテーブルの手前で、あかりさんが静かに足を止めた。
そして、優雅な所作で膝を折り、低い体勢でテーブルの奥に座る男性へ丁寧にお辞儀をする。
「失礼致します。こんばんは、宮本様。ご無沙汰しております」
「お~やっと来たな、待ちくたびれたぞ」
柔らかい笑みを浮かべながら、ゆったりとした口調で挨拶をするあかりさん。
キャバ嬢と言っても十人十色。
テンションの高い子が多い中、あかりさんは終始落ち着いていて、ふんわりと花のような笑みを浮かべる女性である。
さすが、NO.1というだけの風格がある。
あかりさんが宮本様の右側に着いたのを見届け、あかりさんに倣うように膝を折り、腰を落として丁寧にお辞儀をする。
「こんばんは、初めまして、えりなと申します。ご一緒させて頂いても宜しいでしょうか?」
接客マナーで教わった通りの台詞をゆっくりと落ち付いた声で話すと。
「宮本様、えりなちゃんは今日が初めてなんです。私の可愛い妹分なので、可愛がってあげて下さいね♪」
「そうか、今日が初めてなのか。どれどれ、もっと近くで顔を見せてご覧?」
「はい、有難うございます。……失礼致します」
優しく手招きする宮本様は、50代と思われるロマンスグレーの似合う紳士。
ビシッとスーツを着こなしているが表情はとても穏やかで、あかりさんが言うように優しい雰囲気が漂っている。
あかりさんのフォローもあり、私は宮本様の左側に無事に着く事が出来た。
すると、