Love nest~盲愛~
着た覚えのない下着姿で彼の腕に捕らわれる。
彼の肌に触れ、私より少し高い体温が心地いい。
いつ鍛えているのかすら分からないが、程よく付いている筋肉が逞しくて、私の左胸がトクトクと早い律動を刻む。
「えな」
「……はい」
「来週、籍を入れに行こう」
「来週?」
「ん、昨夜弁護士から連絡があって、数日中に解消の手続きに関する処理が完了するらしいから」
「そうなんですね」
「後悔しないか?」
「何をです?結婚する事?」
「それもあるが、えなはまだ22歳だろ。もっと遊びたいとか思わないのか?」
「そうですね……、元々そんなに遊び歩く性格でも無いですし、旅行は好きなので、哲平さんが連れてってくれるなら問題ないかと」
「フッ、……お安い御用だ」
彼の指先が長い髪を梳く。
それも丁寧に大事そうに。
その瞳は15年前の彼と同じで、とても優しく愛おしそうに見つめてくれる。
「腹減ったな。何か作ってやる」
「えっ?!哲平さん、作れるんですか?!」
「俺を誰だと思ってる、当たり前だろ」
この人に出来ないことは無いのだろうか?
*
昨日モールで食材を買ったようで、彼がフレンチトーストを作ってくれた。
西賀に養子で貰われてすぐの頃は、毎日のように家事をさせられていたらしい。
お陰で高校を卒業と同時に一人暮らしを始め、アルバイトをしながら奨学金で大学を出て、大学在学中に起業したと。
私なんて親がいなくなっただけで途方にくれて、アルバイトなんて3日ももたなくてクビになってばかりだったのに。
彼の苦労を今になって実感する。
私なんかより、もっとずっと大変だったはずだから。