Love nest~盲愛~

着た覚えのない下着姿で彼の腕に捕らわれる。

彼の肌に触れ、私より少し高い体温が心地いい。

いつ鍛えているのかすら分からないが、程よく付いている筋肉が逞しくて、私の左胸がトクトクと早い律動を刻む。


「えな」

「……はい」

「来週、籍を入れに行こう」

「来週?」

「ん、昨夜弁護士から連絡があって、数日中に解消の手続きに関する処理が完了するらしいから」

「そうなんですね」

「後悔しないか?」

「何をです?結婚する事?」

「それもあるが、えなはまだ22歳だろ。もっと遊びたいとか思わないのか?」

「そうですね……、元々そんなに遊び歩く性格でも無いですし、旅行は好きなので、哲平さんが連れてってくれるなら問題ないかと」

「フッ、……お安い御用だ」


彼の指先が長い髪を梳く。

それも丁寧に大事そうに。

その瞳は15年前の彼と同じで、とても優しく愛おしそうに見つめてくれる。


「腹減ったな。何か作ってやる」

「えっ?!哲平さん、作れるんですか?!」

「俺を誰だと思ってる、当たり前だろ」


この人に出来ないことは無いのだろうか?



昨日モールで食材を買ったようで、彼がフレンチトーストを作ってくれた。

西賀に養子で貰われてすぐの頃は、毎日のように家事をさせられていたらしい。

お陰で高校を卒業と同時に一人暮らしを始め、アルバイトをしながら奨学金で大学を出て、大学在学中に起業したと。

私なんて親がいなくなっただけで途方にくれて、アルバイトなんて3日ももたなくてクビになってばかりだったのに。

彼の苦労を今になって実感する。

私なんかより、もっとずっと大変だったはずだから。

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