Love nest~盲愛~
ノートパソコンが入っているジュラルミンケースが重く、けれど床に落とすことが出来なくて。
それをしっかり持っていないといけないのに、彼の激し過ぎるキスに溺れて手に力が入らない。
「んっ……てっ……ぺぃ……さッ」
キスの合間に必死に言葉を紡ぎ出し、何とか止めて貰えるように懇願すると。
漸く分かったのか、彼が私の手から鞄を受け取り床に置いた。
そして、腰に回された手は強引に引き寄せ、そのままベッドへと雪崩れ込むように押し倒された。
軽い衝撃と煙草の香りと、彼の吐息に埋もれるように。
私の体を跨ぐように覆い被さる彼の瞳が、何故か憂いがあるようにも見えて気になってしまう。
ロングシャツのワンピースを着ている私の襟元に視線を落とした彼は、無言でボタンを外し始めた。
「哲平さんっ、……何かあったの?」
「………」
彼は無言のまま、ボタンを5つ外し、露わになった胸に唇を這わして幾つかの赤い薔薇を散らした。
そして、ゆっくりと顔を上げた彼は、フフッと意味ありげな表情を浮かべて、漸く素の彼に戻った。
「悪い、ちょっと気が興奮して」
「別に……構わないですけどっ、何かあったんですか?」
ベッドに腰掛け、ネクタイを緩める彼。
大きな溜息を吐きながら、けれど、何故かスッキリしたような表情をして。
コロコロと変わる彼の表情が気になり、スーツの上から彼をぎゅっと抱き締めた。
「私でよければ、何でも話して下さいっ」
昼間、使用人さん達が騒いでいた『家宅捜索』の件が気になって。
養父とはいえ、同じ屋根の下で暮らした家族であろうから。