Love nest~盲愛~
ゆっくりと美顔が近づいて来た。
沢山の人の目がある中、真っ直ぐ射抜くような色気を纏った瞳が……。
私はキスをされるのかと思い、思わず息を止めると。
「―――――………へっ?」
「いいな?俺の言う通りにしろよ?」
「……………??」
甘いバリトンボイスが耳元に纏う。
けれど、それとは正反対に、彼の発した言葉はとても理解出来るようなモノでは無かった。
あまりにも唐突に言われた私は、放心状態で彼の瞳をじっと見据えると。
優しい手つきで前髪を横に流しながら、不敵に微笑む彼。
これから起ころうとしている事って、一体………?
彼にリードされるままに歩かされ、ロビーラウンジの入口に辿り着いた。
すると、
「5分程したら、入って来い。………いいな?」
「…………はい」
口角をキュッと上げた彼は、私の肩をトンを一叩きして、ラウンジの中へと消えた。
………5分後?
それに、さっき言われた事って……。
ロビーの壁に掛けてある時計を眺めながら、彼の言ったセリフを反芻する。
アレを本当に私にしろって?
冗談よね?
ううん、冗談が通じるような人じゃないわ。
彼はどこか、普通の人と違ってる。
普通で考えたら、とてもじゃないけど出来そうにないけど。
だけど、彼がそれを望むのなら、私には選択肢は無い。
両手をギュッと握りしめ、刻一刻と迫り来るその時を待っていた。
そして――――――。