Love nest~盲愛~
「最っ低ーな男ッ!!」
「っ……」
「へっ?!」
彼がいる席へと歩み寄った私は、彼の相向かいに座る綺麗な女性を無視する形で、
演技とは思えぬ表情を浮かべる彼の顔目掛けて、右手を振り下ろした。
すると、流れるようなメロディーが流れる中、パンッという乾いた衝撃音が甲高く響いた。
彼の頬を思いっきり叩いた右手がジンジンと熱を帯びる。
私の行動は、彼の目の前に座る女性は勿論の事、ラウンジ内にいる人の視線を一身に集め。
女優にでもなったかのようにキッと睨みを効かせて彼を見下ろすと。
一瞬だけ口の端を緩めた彼が、骨ばった長い指先を私の手元に伸ばして来た。
「えなっ、怪我してないか?……痛かっただろう?」
「ッ?!」
彼の頬を平手打ちした仕返しが来るのかと思えば、私の手を心配している……という設定?
そんな流れ、聞いてないわよ?
どうリアクションしていいのか分からず、眉根を寄せていると。
「彼女とは今日が初対面だ」
「………それで?これから親しくなろうとでも?」
「いや、だから、そういう事じゃなくて……」
「言い訳は結構よッ!もう、貴方の好きなようにしたらいいいじゃないっ」
私は、彼に言われた通りの内容をやっとの思いで口にすると、