Love nest~盲愛~
とうとうあの人が出張から帰国する日になってしまった。
西賀邸にいる使用人達は、朝から少し緊張気味。
掃除もより一層念入りにされ、厨房からは美味しい香りが漂ってくる。
そんな使用人さん達の邪魔をしないように、私はいつも通りに書庫に籠った。
綺麗な花々が挿絵となって描かれている一冊の詩集を手に、日当たりの良い窓際のソファに腰を下ろす。
あまり読まれた痕跡の無いそれは表紙も綺麗なままだし、あの人の趣味とも思えない。
しかも、同じような系統の書物がかなりある。
書庫の中には経済学、物理学、医学、植物学などの専門書を始め、絵本や童話や料理本に至るまで、ありとあらゆる書物が本棚に収められている。
毎日通っても読み切れないほど……。
ポカポカとした暖かな陽ざしを浴びながら、じっくりと詩集を読み始めた。
どれ程の時間をそうしていたのか……。
気付けば、詩集を5冊ほど読み終えていた。
喉も乾いて来たし、そろそろ昼食の時間になる頃よね?
私は詩集を手にして、ソファから腰上げると。
「ッ?!」
重厚な扉に寄りかかるような格好で、あの人が立っていた。
心臓が止まるかと思った。
だって物音一つ無かった気がするし、何より気配が全くしなかったのだから。
ううん、違うかも。
私が詩集に夢中になっていて、彼が来た事に気付かなかったのかもしれない。
急に嫌な汗が滲み始め、詩集を持つ手が震え出した。
すると、