Love nest~盲愛~
慌てて口にしたものの、時すでに遅し状態。
恐怖心を煽るように、更に彼の顔が近づいて来た。
いつ壊れてもおかしくない程に、左胸がけたたましく鳴り響く。
瞬きする事さえ許されない程に、彼の瞳に囚われていると。
「少しはマシになったな」
「ッ?!」
「でも、まだまだだ」
「………」
顎が左右に大きく振られ、そしてその視線はゆっくりと降下して行った。
顎をギュッと掴んでいた指先が首筋を這って肩先へと。
彼の指先が振れる部分と視線が注がれる部分が気になって、全身の神経が過剰に反応を示す。
すると、視線の先へと彫刻のような美顔が更に近づき、柔らかい感触と共にチクッと痛みを感じた。
それは、前回のモノよりも色濃く刻まれた『契約の証』
首筋から唇を離した彼は満足そうに吐息を吐いた。
この人から逃れようと思えば、この夢のような生活を手放すほか無い事が明白だから、私はそれを甘んじて受け入れる。
刃物で切り刻まれた訳でも無ければ、焼き鏝のような物で焼印を入れられた訳でも無い。
僅かな痛みを伴うだけで、私に害が及ぶ事もない。
他人の目を気にしないという……羞恥心を捨て去れば。
自分に言い聞かせるようにゆっくりと瞼を閉じると、肩に置かれた手が腰へと伝い、私の身体は彼の胸元へとグイッと持ち上げられた。
「腹減った。食事にするぞ」
「っ……、はい」
彼にエスコートされるようにして、昼食の席へと向かった。