Love nest~盲愛~
美味しい筈の昼食も楽しみにしていたデザートも彼の視線があるというだけで、味さえ分からぬ程に緊張した。
久しぶりの彼との食事。
使用人さん達が嬉しそうに従事する中、私1人沈んでいる……そんな感じ。
食後は不在だった出張中に溜まった書類に目を通すと言って、書斎にこもった彼。
私は待ってましたと言わんばかりに書庫へと逃げ込んだ。
だって彼の気配があるというだけで、カチコチに緊張してしまうから。
まだ読んでない詩集を数冊抱えて、窓際のソファへ腰を下ろす。
けれど、同じ屋敷の中にあの人がいるというだけで、全然内容が頭に入って来ない。
この先彼が何を求めて来るのか、全く以て私には見当もつかないからで。
ハァ~と大きな溜息を零して、窓の外に視線を向けた。
色鮮やかな花々と目に映える新緑。
ポカポカな陽ざしを浴びて、とても気持ち良さそうに。
私もあの植物たちのようになる事が出来たら……。
彼が帰国するまでは前向きに頑張ろうとしていたのに、姿を見た途端、覚悟した筈の強い意志も脆く消えてゆく。
少しでも気分転換しようと窓を開けようと施錠部分に手を掛けたその時、コンコンとドアをノックする音がした。
部屋に姿を現した今井さんは、満面の笑顔でこう告げた。
「坊ちゃまが、お呼びです」
「っ……」
彼女の言葉に動揺する事はあっても、私に拒否する選択肢は無い。
私はサイドテーブルに詩集を置いて、彼のもとへ向かおうとすると。