Love nest~盲愛~


「おいっ、大丈夫かっ!!」


慌てて手を伸ばした際に、不注意でティーポットのボディに指先が触れてしまった。

熱くなっているのは当然なのに……。

思わず声を発してしまった私は、無意識に指先を引いてしまった。


そんな私のもとへ駆け寄った彼。

痛いほどに手首を握りしめ、真剣な眼差しで指先を凝視している。


「だっ、大丈夫です。ほんの少し触れただけですから」

「ダメだ!直ぐに冷やさないと……」


彼はすぐさま内線で今井さんを呼んだ。

火傷したというほど、赤くなっていないし、水膨れも出来ていないのに……。


内線を受けた今井さんはすぐさま現れた。

そして、私は彼女と共に1階へ下り、念の為にと処置して頂いた。

ほんの少しひりつくだけなのに……。


彼は心配性なのかしら?

でもそんな人が、ストールで首を絞めたりする?

あれが嫉妬からくるモノであっても……私には理解しがたい行動ばかり。


けれど、気遣いして頂いたのだから、御礼くらいは言わないと。


私は再び書斎へと舞い戻った。


「失礼します」


彼は先程と同じように机に向い書類を眺めていた。


「先程は有難うございました」

「今日は部屋で休め」

「え?」

「時間が経てば、痛みが出るかもしれないだろう?」

「えっ、でも……大した怪我では……」

「いいから、今日は部屋でゆっくり休め」

「…………はい」


< 56 / 222 >

この作品をシェア

pagetop