Love nest~盲愛~
テーブルの上に視線を向ければ、既に紅茶が淹れてある。
もう私は用済みなのかもしれない。
彼の仕事の邪魔は出来ないし、彼の命令に背く事も出来ない。
「お仕事の邪魔をして、ごめんなさい。………失礼します」
私はドアの手前で踵を返し、彼へと会釈した。
すると、
「えなっ……」
「…………はい?」
「いや、何でもない。ゆっくり休め」
「……………はい」
彼は何か言いたそうな表情を浮かべていたが、それ以上は何も口にしなかった。
私もまた、それ以上聞く事も出来ずに……。
自室に戻った私は、ベッドへと沈み込んだ。
私は何をしてるんだろう?
彼に嫌われないように細心の注意を払わないといけないというのに。
これでは、紅茶も真面に入れられないダメ女だと思われてしまうわ。
私に出来る事なんて、彼の意に沿う事をするだけだというのに。
それさえも真面に出来ないだなんて……。
自己嫌悪に陥り、暫く顔が上げられずにいた。
どれ程の時間をそうしていたのか。
漸く起き上がった私の視界に入って来たのは、サイドテーブルの上に置かれた詩集の本。
先程、書庫から書斎へと手にしていた数冊の本。
私が自室に戻ってからは誰も出入りしてないのだから、私が処置して貰っている間にここへ移動した事になる。
という事は、彼は私が戻る前に部屋で休ませようと、これをここへ持って行くように指示をした事になる。
部屋で過ごす私を思い、少しでも気晴らしになるだろうと思って……?