Love nest~盲愛~
私は詩集に手を伸ばした。
これが彼の優しさなのか。
それとも、この後に訪れる地獄の日々への序章なのか。
彼が何を考えているか?だなんて、考えるだけ無駄な気がする。
だって、どんなに思考を巡らせたとしても、私の常識と彼の常識が同じレベルとは、到底思えない。
それならそれで、今この時を思う存分楽しむしかない。
逃げる事が出来ないのだから、私の夢を叶える為には流れに身を委ねるほか無いと思えた。
手にした1冊の詩集をゆっくりと開く。
そこには、優しいタッチの挿絵が描かれていた。
詩には、淡い恋心がしたためれており、懐かしい感じがした。
私にも初恋があった。
幼いながらに一途に想い、届かぬと解っていても目で追ってしまうような……。
時を重ね、環境が変わり、恋だの愛だのという感情を捨て去った私には、儚い想い出のようで。
そんな忘れかけていた感情を思い出しながら、私は生きていると実感する。
命を絶ってしまえば、こういう想いをする事さえ出来ないのだから。
レースカーテンから漏れる心地良い陽ざしを受けながら、私は吸い込まれるように詩集を読み始めた。
足下が少しひんやりとした気がして、私は瞼を押し上げた。
肌触りの良い寝具と心地良い陽ざしの中で私はいつの間にか、寝てしまったみたいだわ。
視線だけゆっくりと窓の外へ移すと、空が見事に茜色に染まっていた。