Love nest~盲愛~
急いで起き上がり、彼のYシャツの袖を掴んでしまった。
何も考えられない脳が勝手に誤作動したみたいに……。
彼はそんな私の手元に視線を落とし、眉間にしわを寄せた。
当然だよね。
彼の言う通りにしないとならないのに、私は彼の行動を制止してしまったのだから。
「何の真似だ」
「っ………」
「自分で何をしているのか、解ってるのか?」
甘い響きのバリトンボイスも、この時ばかりは威圧感を覚えた。
どうしよう。
彼を怒らせてしまったわ。
黒曜石のような瞳から放たれる視線は、今まで一番凍りついたものだった。
「媚びるような女に興味は無い。…………離せ」
「……………すみません」
彼に好かれたいと慾を出したばかりに、彼に嫌われてしまった。
今まで傷つけられるような事もなく、彼の優しさに甘えていたのかもしれない。
彼の冷え切った視線と態度がそれを物語っていた。
私は震えが止まらない指先を彼のYシャツからそっと離した。
すると、
「フッ、お前は“フランス人形”のように、何もしなくていい。して欲しい事があれば、俺が言う」
「……………はい」
凍りついた彼の声。
胸を抉るように突き刺さる。
彼と私の関係なんて、所詮契約で結ばれた仲に過ぎない。
私から何かをしようだなんて、身の程知らずだと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「っ……ハッ……んっ………」