Love nest~盲愛~
晴れ渡った青空の下、潮風に靡く髪を手で押さえながら、太陽の光に照らされた海を見つめる。
隣りにいる彼は煙草を吸いながら、無言で海を眺めている。
その煙が風下にいる私の方へと流れて来て、思わず息を止めていると。
彼はそれに気づいたのか、更に風下になる私の右側へと移動し、何事もなかったように吸い続けた。
沈黙が続くが、もうだいぶ慣れた。
彼の傍にいることに慣れたわけではなく、静かに時が流れるのをただじっと待つだけの過ごし方を。
もう少し波打ち際に近づいてみようかと思い、歩いて行くと……。
「痛っ……」
サンダルからほんの少し出ている足先に何かが当たったようだ。
痛みを帯びる箇所を確認しようと前屈みになった、次の瞬間。
「触るな」
「っ……」
足先を確認しようと伸ばした手を彼が掴んだ。
しかも、砂浜から拾い上げるかのように軽々と抱きかかえて……。
鍛えられた体だと分かるほどに密着する。
煙草の残り香と微かなムスクの香りが鼻腔を掠めた。
揺れる景色。
眉間にしわをよせ、真剣な表情が視界に映り、申し訳なさが募る。
器用に車のドアを開け、ゆっくりと助手席に下ろされた。
そして、すぐさま車が発信し、近くのコンビニの駐車場へと入ってゆく。
「待ってろ」
「……はい」
店内に消えた彼が戻って来ると、その手にはミネラルウォーターと消毒液、それと絆創膏。
助手席のドアを開け、足先を外に出してそこに水をかけ始めた。