Love nest~盲愛~
骨ばった長い指先が頬を包み込むようにそっと添えられた。
そして、その指先はゆっくりと降下し、ワンピースの襟部分を押し下げて、鎖骨付近が露わになる。
彼が何をしようとしているのか、分かっている。
赤い薔薇があるかどうかを確認している。
8日も不在だったから、跡形もなく消えている。
「んッ……」
無言のまま手首を掴まれ、使用人たちが会釈する横を颯爽と通り過ぎ、そのまま2階へと連れて行かれる。
彼と私を追って来る者は一人もおらず、暗黙の了解なのだろう。
彼は寝室のドアを開け中に入ると、そのままの勢いで私をベッドへ放った。
軽い衝撃と共に滑らかな絹地にふわっと包み込まれた、次の瞬間。
煙草の香りを纏った彼が、覆い被さるように私の体を跨いだ。
乱暴にベッドに放られたはずなのに、髪を撫でる指先はとても優しく。
見つめられる視線は恋しさを滲ませたような優艶な眼差し。
骨ばった指先がネクタイの結び目を緩め、形の良い唇が弧を描く。
首筋に触れた唇はゆっくりと楽しむように這い始め、僅かな痛みを引き連れて幾つもの赤い薔薇を散らした。
熱い吐息を纏った唇が離されると、再び視界に西洋の彫刻のような美顔が現れた。
「足の怪我は治ったか?」
「……はい、すっかり良くなりました」
「フッ、そうか」
ニヒルな笑みを浮かべた彼は、ベッドから下りてジャケットを脱いだ。
「食事にするぞ」
「……はい」
珍しくダメだしされなかった。
いつもは一瞥して文句を付けたりするのに。
仕事が上手くいったのかもしれない。
今日の彼は、とても機嫌がいいらしい。