Love nest~盲愛~
彼の部屋にも浴室が備わっていて、今井さんは私の着替えを脱衣所の棚に置き、軽く会釈すると部屋を後にした。
何度も訪れている部屋なのに、初めて訪れた日のように緊張する。
彼はソファーで仕事をしていたのか、ノートパソコンをパタンと閉じて腰を上げた。
「5分したら、入って来い」
「……はい」
Yシャツのボタンを外しながら、彼はドアの奥へと消えた。
5分……。
壁掛け時計を確認して、時間を計る。
5分を大幅に過ぎたら、機嫌を損ねてしまいそうだから。
彼のいう事は絶対。
覆すことも無視することも許されない。
私は大金で買われた身。
入浴の手伝いをするくらいどうってことない。
その先に、未知なることが待っているとしても……。
5分はあっという間に経ってしまった。
意を決して、浴室へと続くドアノブを捻る。
脱衣所に足を進め、その先にあるドアの前で深呼吸し声をかける。
「えなです。入っても宜しいでしょうか?」
「入れ」
「……はい」
すりガラス式の浴室ドアのノブを捻り、ドアを開ける。
浴室は思った以上に広くて、4人家族が入っても十分な広さ。
彼は湯船に浸かり、目を閉じていた。
湯の色は乳白色で、爽やかな香りが鼻腔を擽る。
彼が立ち上がるのが分かり、両手で顔を覆い、ぎゅっと目を瞑った。
だって、彼の全てが見えてしまいそうで。
覚悟はしたつもりなのに……。
男性とお風呂に入ったことのない私は、早まる鼓動のせいなのか、浴室内の熱気のせいなのか分からないけれど、息苦しさを覚えた。
「何、突っ立ってるんだ」
「っ……」