Love nest~盲愛~

最後に会ったのはいつだろう?

かなり前だったし、私も小学生だったからよく覚えていない。

覚えているのは、会う度に彼が怪我をしていたという事だけ。

男の子だから、遊んで怪我をしたのだと当時は思っていたけれど。

今思うと、遊んで負う怪我と違うのがよく分かる。

今目の前にある傷痕と同じで、どう考えてもこんな場所にこういう傷は付きにくいから。


「後は自分でやる」

「……はい」


私は手にしているボディスポンジの泡を濯いで、足下の泡を流す。

そして、他にする事が無くなった為、踵を返した、その時。


「何処へいくつもりだ?」

「っ……はい?」

「出て行っていいとは、言ってないぞ」

「ッ?!」


バスローブ姿の私の腕を彼ががしっと掴んだ。

……まだ続きがあるらしい。

拒否する事は許されないから、覚悟して次の言葉を待っていると。

髪も洗い流し終えた彼は、いつも目にするアレンジされた髪でなく、ストレートの髪の水気を払うようにオールバックにした。

そして、体をほんの少しこちらへ向けた、次の瞬間。

バスローブの結び目がスッと解かれ、彼の手に羽織っているバスローブが回収された。

露わになった肌。

肌が透けそうなくらいの薄い絹地がヒラヒラと揺れた。


彼の視線が向けられているかと思うだけで、上気したのが分かる。

覚悟はしても、反応を示す体を制御するのは無理そうで、恥ずかしさのあまり両手で顔を覆った。

すると、体が急に宙に浮き、天井を仰いだかと思ったら、温かい湯船にそのまま浸かった。

……ベビードール姿のまま。


4~5人は入れそうな大きな浴槽は、ブオーッという音と共にジェットバスに切り替わった。

彼に抱かれる状態で湯に浸かり、直に触れる肌の体温がダイレクトに伝わる。

それと、彼の視線も。

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