Love nest~盲愛~
「いい加減、目を開けろ」
「っ……」
恐る恐る瞼を押し上げる。
乳白色の湯なのが、せめてもの救い。
直視しないように、浴室の壁に視線を向けていると、骨ばった指先に顎が捉えられ、強引に顔が彼の方へと。
しかも、視線が交わるように顎が持ち上がる。
容赦なく絡まった視線の先には、優しい眼差しの彼がいた。
左胸から発せられる警告音がけたたましく鳴り響き、その振動が彼に伝わるんじゃないかと気が気でない。
それに、上気した顔を隠すことも出来ずに、ありとあらゆる場所から危険信号が出ているようだ。
彼の親指が下唇をゆっくりと何度もなぞり、その感触を確かめるように見つめられて。
少しぬるめの湯温なのに、沸騰してるんじゃないかと思うほどに体が熱い。
私から、何かを仕掛けるのを待っているのだろうか?
彼は無言のまま、じっと見つめたままだ。
とはいえ、何をしていいのか、何をすべきなのかすら知らない私は、成す術なく微動だにせずにじっと身構えるだけ。
いたたまれなくなり、白旗を上げた。
「何か、すべきでしょうか?」
して欲しいことがあるなら、先ほどと同じように言うだろうと思ったから。
私は彼の指示に従うだけ、ただそれだけ。
「フッ」
鼻で笑われ、軽くあしらわれた。
私がどうこう出来るとは思っていないようだ。
それならば、じっとしているだけで済む。