Love nest~盲愛~
寝室でも同様に、じっと見つめるだけで過ごす日もある。
『俺がいいと言うまで、ずっと見ていろ』彼がよく口にする言葉。
見ているだけでいいのなら、返って変に気を遣わなくて済む。
目の保養にもなる彫刻のような綺麗な顔を見つめていると、ゆっくりとその美顔が近づいて来た。
何度となく味わう、この感触。
額に優しく触れるだけのキス。
そして、ゆっくりとこめかみを伝い、瞼にも。
その先は頬へ、鼻先へ、そして口元を通り越して首筋へと。
そこからは僅かな痛みも引き連れて、鎖骨や肩先にも赤い華を咲かせながら。
どうして、唇にはキスをしないのだろう。
大金で買った女なのだから、無理やりでもキスすることも出来るのに。
それこそ、その先だって十分に可能なはず。
私が暴れるとでも思っているのだろうか?
それとも、キスなんてしなくてもいい間柄だから?
体を重ねるだけの人々もいると『violette』で教わった。
恋人でなくても体だけの関係を結んでお金を貰う。
そういう人にはなるまいと思っていたけれど、今の私はそれと同じか、それ以下か。
初めての場所がベッドの上でなくても仕方ないと覚悟は決めている。
この関係を受け入れた以上、望むものは無い。
与えられるものを享受する以外に……。