Love nest~盲愛~
今なら聞ける。
普段は怖くて聞く事すら出来ない事も、今なら聞けそうな気がする。
目と鼻の先に形の良い唇がある。
その唇がゆっくりと動いた。
「抱いて欲しいなら、いつでも抱いてやる」
「っ……」
聞き方を間違えたのかしら?
何て聞けばよかったのだろうか?
彼の指先がベビードールの肩紐を下ろし、ブラのストラップも肩からずらした。
必然的に完全に露わになった肩口から指を滑らせ、そのままゆっくりと降下してゆく。
後悔してももう遅い。
自分で仕掛けたのだから……。
恐怖のあまりぎゅっと目を瞑ると、
「逸らしていいとは言ってないぞ」
「っ……」
目を開けたまま、彼のすることを見届ける勇気が私にはない。
身も心も彼に委ねられるのなら話は別なのに……。
自然と涙腺に涙が滲む。
未知なる世界に足を踏み入れる恐怖で。
すると、彼はそれすらも楽しむかのように、フッと鼻で笑った。
22歳にもなって、未だに経験したことが無いのだから仕方ない。
彼に笑われようが、どうすることも出来ないのだから。
「初めてなんですっ。男性とお風呂に入ることもキスすることも、その先も。だから、知らなさすぎて怖くて……」
きっと見抜いてるであろうことは承知の上。
だけど、一度でも伝えておけば、気が楽になりそうで。
どんなに鬼畜であったとしても、ほんの僅かにでも手加減してくれそうな淡い期待を抱いてしまった。
湯船の中、お腹の上でぎゅっと握っている手に彼の手が重なった、次の瞬間。
「俺のことを好きになれ。そしたら、抱いてやる」