君が私にキスをした。
いつものように8時を過ぎた頃
客が引いていき、健さんは常連客のとこへ遊びに行く
私はというといつものように健さんの代わりにグラスを洗っていた
あの時 廊下であった女の子 見覚えがあるんだよね
どこかで……
……あ
思い出した。
確かあの時に
「れい」
「竜さん?」
私が竜さんの方を振り向くと、不思議そうな顔をしてる彼がいた
思わず首をかしげると
「グラス後で一緒洗おー。先に食器一緒に洗おうぜ」
胸が鳴る
こういうとこが好き。
竜さんは他の子には言わないけど、私にだけは一緒にやろうと一緒に一緒にとしたがる
私は返事もせず、食器洗い場に行く竜さんの後を追った
「れいー肩こった」
はいはい。
これは竜さんの口癖。
つまり、
「肩もんでー」
そう。肩もんでってこと
私は はいはいと言って肩をもんであげる
猫みたいに擦り寄ってくる竜さんが可愛くて仕方なくて
こんなにも 愛しいのに
「お前いつまでもじゃれんな」
大嫌いな奴が平気で間を指す
「くそ玲が」
しかも言われるのは私だけ。
彼の名前は 宏さん。
私が憎くて仕方ない相手
宏さんが去った食器洗い場には先程までの幸せな空間が消え
「よし。玲、洗うか」
いつもの時間に戻ってしまった
竜さん、好きです。
結ばれなくてもいい
あなたの側にいれるだけで、私は幸せなの
例え 私が誰かの物でも。