あたしはそっと月になる
「いいよ……下田(しもだ)。一緒に帰ろう……そのかわり、俺の部活終わるまで待ってろよ。それでもいい??」



矢口潤が小さくつぶやいた声に、



「うん。うん。マジ??嬉しい♪待ってる、待ってる♪なんか待ってるとか彼女みたいじゃない??」



と、はしゃいで喜ぶ実夕。



それと同時に、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。



実夕は少し顔を赤らめながら、



手を振って自分の教室へ戻って行った。



「……大塚さ、お前って……下田の……友達だよな?」



席に戻ろうとしたあたしに後ろから矢口潤が声をかける。



その優しく響く声。



そしてその声、その視線が、



今はあたしに向けられている。



そう思うだけでドキドキしてしまうあたし。



「うん。仲いいよ。親友だもん……でも……なんで?なんでそんな事聞くの?」



「下田と大塚ってタイプ違うし、いつも大塚が下田に合わせて無理してる感じがしてさ……なんか、俺にはそう見えるから、お前はどう思ってんのかなってさ」



「そんな事ないよ。タイプは違うかもしれないけど、あたしは実夕……好きだし。友達だよ」



「ふぅーーん。そっか。まっ、俺には女の友情とかよく分かんねぇな」

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