あたしはそっと月になる
あたしの瞳に映るのは楽しそうに笑う実夕と矢口潤の姿。



背の高い矢口を愛しそうに見上げる実夕。



『お似合い』



この言葉がピッタリな二人。



近すぎるくらいの二人の距離に心が痛くなるのを感じるあたし。



実夕の笑顔を見ながら心の中では思うんだ。



あたしだって恋してる。



矢口潤が好き。



あたしは実夕のように可愛くないし、



性格だって明るくないけど、



でも、でも……あたしの心の中には、



こんなにもこんなにも大好きがいっぱいある。



もっと話してみたい。



実夕のように矢口潤の視界に入っていけたなら。



実夕にだって聞きたい事はいっぱいある。



でもそれは心の中だけで思う事。



二人の姿を見て、こんなに切なくなるのに、



あたしの想いの居場所はあたしの心の中だけなんだ。



『映画は本当に矢口潤と一緒に行くの?』



『矢口潤の気持ちは、本人からもう聞いたの?』



そんなあふれるほどの実夕へのそんな問いかけを‥‥‥



あたしはため息と同時に全て消していくんだ。







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