あたしはそっと月になる
「何か考え事??」



突然背後から聞こえた声にこんなにもドキドキしてしまう。



理由はただ一つ。



「え……っ」



「ゴメン、驚かせちゃった?」



慌てて首を横に振るあたしに、



少し安心したような表情を見せるのは、



そう、矢口潤。



「別に……」



会話が出来ることにこんなに鼓動が早まって、



こんなに嬉しいのにね。



あたしは表情ひとつ変えずに矢口潤を見た。



可愛くない態度。



こんなの素直じゃないのは分かってる。



素直になりたい。



でも素直になんかなれないんだ。



実夕のためにも、



素直になんかなっちゃいけない。



そう思うことで現実から逃げているあたし。












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