あたしはそっと月になる
「樹里~!聞いて、聞いて♪3年の先輩から告られちゃったぁ~~♪」



休み時間、今日もまた実夕はうちのクラスにやって来る。



矢口潤に焼きもちを焼かせたいのか、



わざと大きな声であたしに手招きしながら話しかける実夕。



あたしに話しかけてるのに気持ちは矢口潤のほうに向いてるのが分かる。



そういうとこも可愛いって感じなのかな??



「それで返事したの?」



あたしが聞くと実夕は首を横に振ってニコッと笑った。



「だってどうでもいいもん♪あたしは潤だけだもん。潤がいてくれればそれでいいの♪」



こんな可愛らしい声でこんなこと言われたら矢口潤だって嬉しいはず………。



そう思って視線を矢口潤に向けると、



そんな実夕にお構いなしで、実夕に視線を向けることもなく、



友達と話に盛り上がっていた。



「……んもぅ……潤ったら……」



実夕のその小さなつぶやきは、



きっとあたしにしか聞こえなかっただろうな。
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