あたしはそっと月になる
矢口潤は黙ったまま、静かに外を眺めていた。



あたしはそんな矢口潤を見つめながら、



矢口潤が何かを口にするのを待った。



あたしはズルイ。



あたしの言葉を聞いた後の矢口潤の反応を、



心のどこかで心待ちにしている。



待っているんだ。



実夕はあたしを信じてくれているのに、



あたしの心はズルイ……。



矢口潤の反応にあたしは何を期待しているの??



期待………??



何を………?



なにかを期待なんてしている自分。



なんだか虚しさが込み上げてくると同時に悲しくなってきた。



そう感じたら、その場に矢口潤といるのが苦しくなったあたし。



「じゃあね……」



あたしは小さく手を振って、



雨の振る外へと勢いよく飛び出した。


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