あたしはそっと月になる
だって、だってね。



思い続けてきたこの想い。



それは簡単に諦められるような、



中途半端な想いじゃないから。



「ダメなんかじゃないけど……なんであたしなんかを…」



「送りたいんだよ。送らせて。なっ??」



「……なんで??あたしは実夕じゃないよ??分かってる??」



今までずっと……いつだってあたしは……実夕の影だった。



それでも、そんなあたしでも、



矢口潤への気持ちは実夕に負けていない自信があった。



「なんでって?俺は大塚だから…送りたいんだよ??」



矢口潤の顔があたしに近づきそっと覗き込む。



「だって…実夕が…」



「下田は関係ない!関係ないじゃん!!」



矢口潤は少し強い口調でそう言い終わると、



あたしをじっと見つめた。



途端にあたしはまともに矢口潤を見れなくなる。



矢口潤の大きくて綺麗な瞳にあたしが映る。



「だって実夕の気持ち、知ってるんでしょ??実夕に誤解されたら……あたし…」



「そんなの気にしてんの??」



「うん。実夕は矢口のこと好きだし…」



「大塚さ、もっと自分に自信持てよ。俺が言うのも変かもしんないけど、大塚はいつも下田に気を使いすぎてない??」



そう言いながら、矢口潤の手は持っていた傘をさっと手放した。



あまりにも突然であっという間の出来事。
< 43 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop