あたしはそっと月になる
8・・・歩幅
次の日、教室に入ると、



友達と話をしてた矢口潤。



あたしが矢口潤を見ていたら瞬間的に目と目が合った。



「…おはよっ……っ」



あたしの小さな声は、



矢口潤に聞こえたかは分からないけど、



あたしはいつもそらしてしまう視線を初めてそらさなかった。



ドキドキする気持ちに包まれて、



その思いが今にもパンクしそうなくらいなのに、



矢口潤は笑顔で、そんなあたしのそばまで来た。



「おはよう」



そう言って、あたしの頭にポンっと手の平を乗せ、



「大塚が俺におはようとかマジ初めてじゃん」



何度も優しくあたしの頭を撫でる矢口潤。



もう……あたしは逃げないんだ。



このあたしの気持ちから。



そう決めたんだから……だから………。



「あのね……今日……昼休み、話があるの……いいかな?」



「え…?あぁ。いいよ」



「じゃあ、図書室で待ってる……」



「OK」



もうあたしに迷いはないから……。



あたしはもう本当の気持ちから逃げたりなんかしない。




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