あたしはそっと月になる
「なんだよ??あんまり見るなよ。なんか照れるじゃん」



あたしの視線に気づき、そう言いながら、矢口潤もあたしを見つめる。



「あのね、あたし……矢口のこと……」



言えるよね。今なら。



「…ん??」



きっと大丈夫。



「あたし、矢口が好き…ずっと前から好きなの……」



ずっとしまいこんでいた気持ち。



「……それ、マジで……??」



今やっとあたしの口から出た言葉が矢口潤に届く。



「うん……。それが言いたくて……」



矢口潤はあたしをじっと見つめたまま優しく微笑んだ。



「冗談だよとか言うのはなしだぜ??」



「冗談なんかじゃないよ」



「そっかぁ……」



「うん。あたしの言いたかったことはそれだけ。じゃあ、あたし先に教室戻るね」



なんだか急に恥ずかしくなって席を立つあたし。



「ちょっ……待てよっ!!」



矢口潤は素早く立ち上がり、あたしをさっと引き寄せた。



「えっ?」



「言うことだけ言って、俺の言葉は聞かないわけ??」



矢口潤の腕の中にスッポリと収まったあたし。
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