あたしはそっと月になる
「そう言えばさぁ…もうすぐバレンタインじゃん」



放そうとした繋いだあたしの手を見つめながら、



急に思い出したように矢口潤が言った。



「樹里はさ、俺にくれんの?」



「……うん。あげるつもりだよ。手作りとか初めてだから、実夕に教えてもらいながら作るけどね」



そう。そうなんだ。



実夕も今、新しい恋をしている。



手作りチョコも、好きな人にあげるのでさえ、



あたしには初めてのこと。



実夕は笑顔であたしに、



「めちゃくちゃ美味しいチョコ作ろうね」



と、言ってくれた。



「手作りかぁ~。俺、感激して泣くかもっ……」



「あはっ…ま~さかっ」



あたしが笑うとふと真顔になった矢口潤。



「えっ…??」
< 73 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop