[短編]初恋を終わらせる日。
*別れ話は中庭で




「ねえ、別れよっか、優也くん」




そんな私の言葉に黒目がちな瞳を見開いて、あまりに君が驚くものだから思わず笑ってしまった。


それもそうか。

学校の裏庭で二人で弁当を食べていて、『卵焼き貰っていい?』と君は聞いたのに、私がそんな返事をするんだもん。

確かに驚くなっていう方が無理かもしれないね。





「あ、いいよ。卵焼き、あげるよ」





なんて今更言ったところで君の箸は動きはしない。

ただ信じられないというような顔をして、私に縋るような瞳を向ける。


でもさ、優也くん、私の方が信じられないよ。


何で君がそんな顔をするの?

どう考えたって嬉しいでしょ?



よっしゃーってガッツポーズでもして、ラッキーってスキップでもしながら喜べば良いじゃん。

嬉しさのあまり、今この瞬間、私の前で踊り出せば良いじゃん。


少し前に色を変えたっていうのにもう散り始めた葉が、風に吹かれて舞って、私のブレザーの袖に着地する。

それを手に取って、私はまだ言葉を発さない君にもう一度告げる。





「別れようよ、優也くん」







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