[短編]初恋を終わらせる日。
「でも、俺はその気の強さ、嫌いじゃねーよ」
「そりゃ、どーも」
……なのに、天谷は、何で私なんかを好きになったんだろう。
好きだと言われたのは、そう。
中学の卒業式、私が優也くんと付き合い始めた次の日だった。
お調子者で、いっつもくだらない理由で絡んでくる天谷が珍しく緊張していて。
まるで知らない人みたいな彼が、微かに震えた声で " 好きなんだ " と私を見つめて言ったんだ。
天谷のことは嫌いじゃない。
むしろ、好き。
だけどそれは優也くんに抱く " 好き " とは確実に違う。
でも振ってしまったら、断ったら、天谷とはもうバカやって笑い合えなくなるのかな、なんて思うと不安で言葉に困った。
そしてそんな私に気付いたのか、天谷は困ったように笑って、そのまま去ってしまった。
……あれ以来、天谷はあの日の話に触れない。
だから今でも好きだという保証はないけど、そうなんだと思う。
直接は伝えずに、遠回しに、天谷は言葉の端々に好きだと分かるような要素を含めてくるから。