[短編]初恋を終わらせる日。
優也くんなんて、嫌いになれたらいいのに。
天谷のこと、好きになれたらいいのに。
何度そんなことを思ったのか分からないけど、どうしようもない。
そんなに簡単じゃない。
嫌いになりたくてなれるのなら、とっくになってる。
ズルくて、臆病で、弱虫で、頼りない。
例え君の嫌いなところを100個見つけられたところで、私はきっとたった1個の君の好きなところで、君を想ってられる。
……こんなこと思ってるから、ダメなんだ。
だから優也くんに付け込まれるんだ。
お姉ちゃんの代わりなんて、させられるんだ。
思わず泣きそうになって、唇を噛み締めた、その時。
「先生ー。七瀬さんが具合悪くて死にそうなんで、保健室連れて行っても良いですか?」
後ろから、そんな天谷の声がした。
どうして、天谷は何も言わなくても分かってくれるんだろう。
どうして、情けない顔を見せなくても、いつも通り接そうとしていても、伝わってしまうんだろう。
……そしてそれはどうして、優也くんじゃなくて、天谷なんだろう。