[短編]初恋を終わらせる日。
やっぱり聞かれるよね。
そうだよね、その為に連れ出されたんだもんね。
「優也くんと何かあったことは確定なんだ」
私が話を逸らそうとしたところで天谷がそれを許してくれるとは思えないけど、少しでも重たい雰囲気を逃れたくて、わざと明るく振舞おうと決意して口を開いた。
「だって美沙は、あいつのことでしか悩まねぇじゃん。俺じゃ、お前を悩ませることも出来ない」
でも、ダメだ。
どうして天谷はこうも、私が何も言えなくなるようなことを言うのが上手いんだろう。
「ーー美沙」
いつになく真剣な声で名前を呼ばれたその時、天谷が動く気配を感じた。
どうしたんだろう、と仰向けになると私に黒い影が覆い被さった。
「あま、や……っ」
「やっぱ撤回。俺でも美沙は、悩ませられるみたい」
顔の横には、天谷の両手。
すぐ目の前には、天谷の顔。
気付いた時には私に跨がっていて、戸惑う私を瞳に映しながら、どこか嬉しそうに見下ろしている。