[短編]初恋を終わらせる日。
「放課後の図書室って本当に人が来ないから、美沙ちゃん、ゆっくりしていってね?」
自分と似たような顔が、自分が決して浮かべることがないような穏やかな笑みをする。
それがいつでも、どこか不気味に思う。
……いや、違うかもしれない。
お姉ちゃんは、何を考えてるのか分からないんだ。
まるで貼り付けた仮面のような笑みの下で、一体どんなことを思ってるんだろうって、本気で思う。
「……そうだね、お姉ちゃん」
この人はきっと私や親の前で、本気で笑ったことなんてない。
心なんて開いてないし、妹だと思われてるのかも分からない。
私は昔からそんなお姉ちゃんが怖くてーー嫌いで、仕方がない。
そういえば、お姉ちゃんが何が好きで、何が嫌いかなんて一つも知らないかもしれない。
そんなもの、存在するのかすら知らない。
「美沙ちゃん、どうかした?」
「……ううん、何もないよ」
まあ、そんなことを知りたいと思ったことがないんだけどね。