[短編]初恋を終わらせる日。
保健室での天谷の顔を思い出す。
辛そうで、今にも泣きそうで、それでも気丈に振る舞おうとする彼は、見てる方が泣きたくなるほどだった。
傷付けたくないのに。
私なんかのせいで傷付けたらいけない人なのに。
天谷は、幸せでなきゃいけないのに。
でも私は一度だって天谷を突き放したことがない。
あの告白だって、結局ちゃんとした返事なんて今もしていない。
それでも私のそばにいてくれる優しさに、真っ直ぐで純粋な想いに、ずっと甘えてきた。
……何だ。
私も優也くんと変わらないじゃん。
優也くんじゃ埋まらない、優也くんが埋めてくれない寂しさを、天谷で何とか埋めて誤魔化そうとしてる。
それなのに優也くんばっかり責めて、もしかしたら私の方がずっと嫌な奴なのかもしれない。
「ーーあれ、優也。何、図書室?」
その時、廊下から聞こえた話し声に、息を呑んだ。