[短編]初恋を終わらせる日。
古くなってきて建てつけの悪いドアは、私とお姉ちゃん以外誰もいない図書室に、ガラリと大きな音と振動を響かせた。
「あれ、優也」
「あー、佐和ちゃん。……さっちゃん見なかったかな?」
不思議そうなお姉ちゃんの声と、どこか気まずそうな優也くんの声。
……お願い、お姉ちゃん。
私がここにいること、どうか教えないで。
こんな時だけ都合が良いなって自分でも思う。
だけど、私はそう願うしかないの。
「……美沙ちゃん、ねぇ」
意味深に繰り返したお姉ちゃんに、私は祈りながら本棚の陰に身を隠すことしか出来ない。
「なに、喧嘩でもしたの?」
「いや別に、そう言うわけじゃ…っ」
YESともNOとも言わずに、楽しそうに優也くんに尋ねる。
早く終わらせてよ。
優也くんに突き出したいなら、さっさとそうすれば良い。
……この緊張感を楽しんでるというなら、あまりに性格が悪すぎるよ。