[短編]初恋を終わらせる日。




古くなってきて建てつけの悪いドアは、私とお姉ちゃん以外誰もいない図書室に、ガラリと大きな音と振動を響かせた。




「あれ、優也」


「あー、佐和ちゃん。……さっちゃん見なかったかな?」





不思議そうなお姉ちゃんの声と、どこか気まずそうな優也くんの声。


……お願い、お姉ちゃん。

私がここにいること、どうか教えないで。


こんな時だけ都合が良いなって自分でも思う。

だけど、私はそう願うしかないの。




「……美沙ちゃん、ねぇ」




意味深に繰り返したお姉ちゃんに、私は祈りながら本棚の陰に身を隠すことしか出来ない。




「なに、喧嘩でもしたの?」


「いや別に、そう言うわけじゃ…っ」





YESともNOとも言わずに、楽しそうに優也くんに尋ねる。

早く終わらせてよ。

優也くんに突き出したいなら、さっさとそうすれば良い。


……この緊張感を楽しんでるというなら、あまりに性格が悪すぎるよ。




< 25 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop