[短編]初恋を終わらせる日。
「その喋り方やめたら?疲れるんじゃない?」
優也くんが腰掛けた机の隣の席の椅子に座りながらそう言うと、視界の隅で体がピクリと反応したのが分かった。
もういいよ、優也くん。
私の好きだった君を演じる必要なんて、ないよ。
だって、知っちゃったんだもん。
もう戻れないよ。
忘れられない、無かったことになんて出来ないよ。
ーーほんと、黙ってたら同じ顔なんだから、大人しくしとけばいいのに。
背筋が凍りそうなほど低い声で吐き捨てられた言葉は、紛れもなく君の本音。
もしかしたら、初めての君の本音なのかもしれない。
「……はは」
差し込むオレンジに照らされながら、優也くんが笑う。
反射する髪は茶色くて、やっぱり君は綺麗で。
「やっぱり、さっき図書室にいたんだ」
それが余計に、悲しかったの。
私が知ってる優也くんの中に、本当の君の姿はありましたか?
君は私のそばにいて、幸せだと思った瞬間は、ありましたか?