[短編]初恋を終わらせる日。
*優しい廊下
「……天谷、帰るんじゃないの?」
ぐんぐん進んでいく天谷。
だけど帰ると言ってたはずの彼は、なぜか下足箱から離れていく。
「んな酷い顔したお前と帰れるかよ、バカじゃねぇの?」
不思議に思って尋ねると、速攻でそう返ってきた。
……た、確かにそうかも。
だけど、もっと言い方ってものがあるでしょ。
「ねー、天谷」
「……何」
ムッとしながらも呼びかけると、少しの間の後、不機嫌そうな声が返ってきた。
……もう、何でこんなに機嫌悪いかな?
「ありがとね」
私のこと助けれてくれて、連れ出してくれて、ありがとう。
しっかり天谷を見ながらお礼を言う。
まあ、決してこっちを見ようとはしないから、視界にあるのは天谷の後頭部なんだけどね。
「……うるせぇ。黙って歩け」