[短編]初恋を終わらせる日。
そのあまりに分かりやすい照れ隠しに思わず笑いそうになった。
でもここで笑っちゃったら天谷はきっと更に不機嫌になっちゃうだろうから、何とか堪えようとする。
「美沙、何がそんなに面白いんだよ」
それでも微かに揺れた体に天谷は気付いたようで、振り向いて睨まれた。
あー、失敗しちゃった。
「ねえ、どこに行くの?」
「……お前が泣ける場所?」
「私、泣かないよ?」
本気でそんなこと言われたけど、返答に困ってとぼけたように、そう返した。
「……それはさ、俺の前だから?」
さっきの教室と同じように廊下にも差し込む夕陽。
オレンジに染まる天谷は、私にさっきの光景を思い出させる。
「それともやっぱりまだ、何も認めたくないから?」
やけに真剣な表情で、声で、天谷が問いかける。
……こんな風に、優也くんは私と真っ直ぐ向き合ってくれた瞬間があったのかな。