[短編]初恋を終わらせる日。
ダメだな、もう優也くんのこと考えてる。
私の毎日って、こんなに優也くんだらけだったかな?
ずっとそうやって生きてきたから、分かんないや。
忘れ方も、嫌いになり方も、何一つ分からない。
だって、初めてなんだもん……。
「私がちゃんと泣けるのは、きっと天谷の前だけだよ」
「美沙……っ」
「だからさ、天谷。私が泣き果てて、優也くんのこと忘れられるまで、完全に好きじゃなくなるまでーー」
" 一緒にいてくれないかな? "
そう言いたかったのに、その言葉は声にならなかった。
すぐ近くに感じる、天谷の匂い。
背中に回された力強い腕。
首筋にふわふわと触れる柔らかい髪がくすぐったい。
……どうして私、天谷に抱きしめられてるの?
掴まれていた腕を思いっきり引っ張られたかと思うと、次の瞬間には温もりに包まれていた。
頭がついてこない。
言葉を発することも出来ずに、されるがままでいると。
「今はさ、それで十分。俺は、それだけで物凄い幸せ」