[短編]初恋を終わらせる日。



……天谷の絵、見れるかな?

好きだって言えば、またあの時みたいな笑顔を見せてくれるかな?


私が頷くのを確認すると、天谷は離れた。

失った温もりがどこか惜しく感じてしまうのは、きっと寂しいから。




「……あれ、でも部活中じゃないの?」


「本日顧問は風邪のため休みなので、部活も休みです」


「何で天谷はあらゆる教室の鍵持ってるわけ……?」





ポケットからドヤ顔で鍵を取り出した天谷に呆れる。


昼間は保健室だったし……うちの高校鍵の管理体制見直した方がいいよ、絶対。





「あ、そうだ美沙。泣き喚くのは良いけど涙とか鼻水で俺様の絵、汚すなよ?」


「……天谷さ、喧嘩売ってる?」




さっきまでの雰囲気はどこに行ったと突っ込む気力すら奪うような天谷の台詞。

天谷といたら、泣きそうでも、すぐにこうなっちゃう。


それが良いのか悪いのかは分からないけど、少なくともこの関係性は、嫌いじゃない。







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