yellow ribbon
靴を履き替えて傘を手に持った時、玄関の端で空を見上げてる人がいた。
あ…夏樹、くん。
空見てるけど、傘忘れたのかな。
手に持ってるわけでもなさそうだしそうかもしれない。
でも夏樹くんのことだから、誰かが入れてくれると思うけど。
もしかしたら人を待ってるのかもしれないし…彼女とか。
それに私が声をかけたところでうざがられるか気持ち悪がられるだけだって、絶対!
…見なかったことにしよ。
もうひとりよがりで傷つきたくないもん。
さっさと帰ろうと傘を開いて歩き出そうとする…のに。なぜかそこで立ち止まったままの私。
『おいブス!お前傘忘れたのか?』
『本当は嫌だけど俺が入れてやらなかったから風邪ひいたって言われたらもっと嫌だし』
『仕方ないから入れてやる!』
小学校の時の事を思い出してしまった。
夏樹くんはぶっきらぼうに言って、顔を赤くしながら正反対の私の家まで送ってくれた。
「〜〜っ!ね、ねぇ!」
どーにでもなれ!と思って掛けた声は誰もいない玄関に大きく響き渡った。